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#02 国際絵本原画展会場へ - ボローニャ国際絵本原画展入選者のイタリア・ボローニャ一人旅

宿泊施設 B&B Bononia Fiera の前に広がるドン・ボスコ公園
宿泊施設 B&B Bononia Fiera の前に広がるドン・ボスコ公園

公園を雪のように埋め尽くすポプラの綿毛。私は花粉症ですが、このポプラの綿毛に関しては特に、目や鼻が痒くなったり、くしゃみが出たりと、そのような症状は出ませんでした。後でわかったことですが、実はポプラの綿毛自体は、種と実で構成されており花粉ではないそうです。そのため、アレルギーは誘発しないとのことです。

1 April – 17:00 Bologna Children’s Book Fair

宿泊施設のオーナーがイタリア語と身振り手振りを交えながら、鍵の使い方を説明し終わると、私は荷物をまとめて直ぐにボローニャ国際絵本原画展の会場に向かいました。宿泊施設からボローニャ絵本原画展の会場までは、徒歩で10分程度。ホテルのエントランスを出て目の前のParco Don Bosco(ドン・ボスコ公園)を横切り、交差点に差し掛かりました。を渡りました。展示会場らしき大きな建物を発見したのですが、ボローニャ国際絵本原画展のポスターやサインなどは見当たらず、人通りも少ないのでどこが会場なのか全く検討がつきません。そうこうしているうちに、数人組の男女が首からボローニャ国際絵本原画展のパスを下げているのを発見したので、私は付いて行くことにしました。

錆びた鉄格子の門を入り、木々に囲まれた石畳を通り抜けると、大勢の人が歩いているのを目にしました。どおりで、ポスターやサインなど何も出ていないと思ったら私が通ってきた道は裏道でした。会場入り口では大勢の人々が行き交っており、私は入場ゲートへと進む流れに乗って歩きました。

入場ゲートでは、あらかじめ準備しておいた入場パスに記載されたバーコード、またはQRコードを機械にかざすとゲートが回転して入場できます。ボローニャ国際絵本原画展の入選者は、事前に入場パスがデータで送られて来るので、それを印刷して持っていけば無料で入場が可能です。

入場ゲートを通過すると、壁面には大勢のイラストレータが自らの作品を貼り付けた、ここにはボローニャ国際絵本原画展の入選者以外の人も作品や名刺を貼り付けることができるので、テイストの違う作品を見ることができて、大変興味深くもあり、世界中のイラストレーターの多さに圧倒されてしまいました。

 

そんな中、「来場された際にはJBBYカウンターへ来てください」と板橋区立美術館の方に言われていたのを思い出したのですが、会場が広すぎてそれがどこにあるのかも検討がつきません。入場ゲート付近の案内カウンターにて英語で問い合わせて見たのですが。「そんなものは無い」と言われてしまいました。

 

JBBYカウンターに到着。そこで、板橋区立美術館の高木さん、と絵本作家のだよしこさんとMICAOさんと出会いました。私がとても不安そうに見えたのか、高木さんとのださんの心遣いで、その日の夜8:00から催される食事会場 Ristorantino Il Tinello (リストランティーノ・イル・ティネッロ )まで案内していただけることになりました。

のだよしこさんはイタリアのボローニャに15年程住んでおられて、現地のことに大変詳しい方だということで、今回のボローニャ国際絵本原画展では、ボローニャ中心地の地図やボローニャ駅の案内を手書きで描いていただき大変助かりました。MICAOさんは2019ボローニャ国際絵本原画展に入選された刺繍のイラストレーターの方で、イタリアの出版社からすでに絵本を出版されている大先輩です。

 

一通り会場内を散策して、全体の印象を掴んでおこうと歩いて周ったのですが、会場のあまりの広大さと出展ブースの多さにも圧倒され、全体を把握するのに一苦労。それでも、出版社のブースの雰囲気や、どんな国の出版社が出ているのか、どのような印象の作品が出版されているのかを大雑把に把握していきました。

 

 

1 April – 18:00 Bologna Children’s Book Fair


出発の時間になったので、市内バスにに乗ってボローニャ市内中心部まで移動することにしました。のださんに案内してもらい、MICAOさんと一緒にバスに乗り出発しました。ボローニャ国際絵本原画展が開催されている会場付近は、割と現代的な建造物が多く、新しい街並みという印象でしたが、ボローニャ中心地へ進むにつれて徐々に町の雰囲気が変化し、

石畳の道を通り、煉瓦造りの建物が現れ、中世のヨーロッパという雰囲気になってきました。ボローニャは割と公園も多く、街路樹も程よく植えられており、大都会でもなく程よい規模の街で居心地の良さを私は感じました。

バスに乗っている間に、のださんから、恐竜の化石の博物館や、植物園、絵本が豊富な書店などを教えていただきました。ボローニャは大学の街で、学生も多く、大きな図書館や博物館、植物園などがあるのかもしれません。

 

今にも倒れそうなボローニャの斜塔の下を通ったり、有名なアーケード街を説明していただいたり、一人だと見ていないし気づいていないような所を案内していただいてよかったです。

 

食事会までまだ時間があったため、のださんのイタリア人の知り合いの方が工房兼ギャラリーにて展示をしているということで、私も一緒に見に行くことにしました。そこは、洋服を作る工房とギャラリーが一緒になった場所で、それほど広い空間ではないのですが、多くの人で賑わっていました。奥のテーブルには軽食や飲み物が出され、ポートフォリオを広げて会話をしている人たちがいたりと、日本ではあまり見るこののない雰囲気にとても感激したとど維持に、羨ましくも感じました。ヨーロッパという場所は文化的なことに懐が深いと言えばいいのか、ボローニャ国際絵本原画展もそうですが、世界中から多くの作品を受け入れて、様々な国の、様々なテイストの作品が入選しているという場に、私自身も直接触れたということだけでとても貴重な経験をしているのだなと感じました。

 

飾られていた作品は、ポートレートを印刷した布に、色とりどりの刺繍でその人物のイメージを付け加えて表現した作品でした。糸の多様な質感や色味のうねりが様々な表情を作り出し。ボートレイトを際立たせているように感じました。この人物は穏やかな性格なのかな?この人物は突拍子もないことを考えていそうだなと、様々な想像が私の頭の中を巡りました。

 

 

 

アートディレクターの方に水曜日に写真撮影があるからモデルになってくれないかと言われたのですが、どうしていいかわからず、その日は予定があると言って断ってしまいました。実際に水曜日はインタビュー撮影やアワードの発表などがあり予定があったのですが、こういう場合は無理をしてでも参加しておけばよかったなと後になって思いました。

1 April – 20:00 Ristorantino Il Tinello

 

そうこうしているうちに、食事会の時間が近づいてきたため、私たちはボローニャの斜塔近くにある食事会場 Ristorantino Il Tinello へと向かいました。食事会状に到着すると、まだ人はまばらである程度自由に席を選べるような状態でした。そして、丁度私の目の前に立っていた人を見ると、すぐにコクマイトヨヒコさんだとわかりました。実は、ボローニャ国際絵本原画展の巡回展を行なっている兵庫県にある西宮美術館の方からワークショップの相談があり、その時の参考事例としてボローニャ国際絵本原画展の入選者であるコクマイトヨヒコさんのワークショップページを紹介して頂いたのです。そして、私はそこで始めてコクマイトヨヒコさんの作品を見て、衝撃を受けてしまいました。作品は新聞記事を拡大コピーした紙を使った切り絵作品なのですが、その切り絵の一枚一枚にドット(印刷の技法)の濃淡があり、淡いモノクロームの陰影の中にロウソクのような光が見えるような、そんな作品なのです。私はその作品を見て、とても素晴らしい作品だと感じました。

 

ですので、さも偶然のようにコクマイトヨヒコさんの席の前に座ることにしました。コクマイトヨヒコさんの隣には奥様が座られ、私の隣には2019年の入選者である INOUE YOSUKE さんが座られました。 INOUE YOSUKE さんは、板橋区立美術館のロゴデザインをされた駒形克己さんの出版社ONE STROKE から実験的な絵本を出版されていました。駒形克己さんの作品のテイストに近い、明瞭でグラフィカルな表現が特徴の作品です。

 

作品の技法をどう思いついたのか? 学生の個性を伸ばすのはどうしたらいいのか?など教育の話にまでなり大変楽しくお話をさせていただきました。不思議と美味しい食事とお酒を飲んで楽しく話したはずなのに、「また喋り過ぎてしまったな」と思って落ち込んでしまいます。

 

23時半まだまだ料理が出てきている最中、私は宿泊施設に帰ることにしました。約束の22時はとっくに過ぎていました。ワインばかり飲んでいて、何を食べたのかあまり覚えていない中、帰路につくため目的の22番乗り場を探していきましたが一向に見つかりません。バス停を探して歩いているうちに、ボローニャ駅に近づいてきたので、このまま歩いて帰ることにしました。夜中に一人で歩いて帰ることになるとは思ってもいなかったので、緊張しながら出来るだけ街灯のある場所を歩いて帰りました。迷いながらもなんとか宿泊施設にたどり着いたのですが、照明の消えた真っ暗な階段を手探りで登り、電気をつけようとと思い、暗闇の中手探りでボタンを探して、押してみたのですが、別の玄関のチャイムだったようで、室内から聞こえるこもったブザー音が鳴り響いき、開かない扉。もしかしたら、このまま部屋に入れないかもしれないと思い私は、その場に立ちすくんでしまいましたが。しばらくすると、鍵を開ける音がして、ジャン・レノ風のオーナーが出てくれました。

 

インタビューを受けて、問いから生まれる新たな作品

 

私は短いインタビューを通して重要な問いをもらったような気がしました。そして、その問いに対して言葉で答えるのでなく、その問いに対する答えを絵本にしてみたらどうだろうと思い立ちました。私なりに黒というものを解釈し、そこに物語を与えて行きました。そうこうしているうちに、暗がりのホテルの一室で絵本の下書きが出来上がりました。このようにして、作りたい絵本のアイデアは出てくるのですが、作品を制作する手が追いつかない状態だと思います。しかし、焦ったところでどうにもなりません。私には今できることをするしかないのですから。

 

偶然英語を話せる宿泊者に助けてもらい、ようやく鍵の開け方を習得。

鍵は3周回す。

少しドアを引きながら鍵を回転させ、そのまま扉を押す。などなど、日本の鍵には無い使用方法をようやく理解できました。

 

出版社に絵本を数冊配り、名刺交換も行いました。これからどうなるかわかりませんが、どのような展開になるのか楽しみです。

 

講評会が11時からあるということで、待っていたのですが、なかなか始まらないので入選作品を見ていました。審査員であるオランダのイラストレーターの方に講評会で取り上げてもらうことができました。これは本当に嬉しかった。

 

美術館の方にも、手製本したサンプルを見ていただいたのですが、表紙を見て「ムンクの叫び、のようで少し怖いです」と言われて、私の頭の中にデビッド・リンチの作品が出てきました。おこがましいけど私は、ムンクの叫びというよりもデビッド・リンチの悪夢のような作品に近いかもしれないと思いました。

 

 

最終日はおまけのようなもの。ボローニャ市内の観光と家族へのお土産を買うために出かけました

ボローニャ国際絵本原画展イラストレーターズ年刊 Bologna Children's book fair  ILLUSTRATORS ANNUAL 2019.
ボローニャ国際絵本原画展イラストレーターズ年刊 Bologna Children's book fair ILLUSTRATORS ANNUAL 2019.

ボローニャ国際絵本原画展でいただいたイラストレーターズ年鑑。全入選作家の作品が掲載されています。ここ数年は共通のデザインとは言え180ページをこの短期間で仕上げるのは大変だったと思います。Bologna Children's book fair ILLUSTRATORS ANNUAL 2019. book cover illustration by IGOR OLEYNIKOV.